連綿と過去

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今月の十四日、誕生日を迎えた。三十回めの誕生日だ。おめでとう。きりがよいのはよいことだ。火曜日の平日、昨年の師走からまだよまだよと両肩にのっかり背骨軋ます繁忙期、正直それどころではないと萎れる私をなだめすかして夜明けのあくびに祝ってやった。三十回め。おもっていたよりもずいぶん長生きしているじゃあないか。そうだとも、長生きしすぎているし今日もおしごとがおわらんのだから、なんというか、まるごとすっぱり終わらしてしまったらよいのかも。どうどう、まだそのときではないよ。そう心配なさらずとも、ものごとはきちんときめてあるのだからね、今日は晴れやかなる一日めを懸命にしなさい。はあい。なぞともうすこしあくびをかぷかぷやって、水場へ顔を洗いにいった。そうだったろうか。きっとそうだ。

実家でのパーティーは四日遅れの十八日、土曜日に都合してもらった。

ことしのケーキはファウンドリーのタルト。先日のサイトリニューアルの折、過去記事を整理していたら二〇一九年の弟の誕生日にファウンドリーのタルトを買っているのをみた。これがずいぶんおいしそうにみえて、ことしはひさしぶりにファウンドリーで買おうときめていたのだ。時期が近いからか、ちょうどおなじのがあった。ここのケーキはどれも果物がたっぷりとかざられている。みずみずしくて、つやつやとして、ながれる水にだいじに抱かれた川辺の石のようにきれいだ。果汁がぎゅっとつまっているのもよい。

母のてづくりのごちそう。ことしのメインはちらし寿司とペルーの煮込み料理。魚介のサラダはリンゴ酢とぶどう酢でこしらえられたドレッシングの酸味がきいてさっぱりめ。どれも美味。

モッツァレラと豚もものハム、プチトマトのあざやかな彩り。わが家の盛り付け大臣と名高い弟の作。料理の盛り付けも菓子類の盛り付けも、盛り付けと名のつくものは弟を召喚するにかぎる。私はそちらの才がとんとないが、味見の才はじゅうぶんにある。そばでしずかにとんだりはねたりしていると、食材を手際よく皿にならべていく弟のかろやかな手首がすこしひねられて、つまみぐいが口に投げ込まれた。美味。

三十回めのパーティーも、おいしいものをたくさん食べた。おいしいこと、はらが満たされることはよいことだ。あらたなる年も佳き日々がありますように。あるかぎり、幸あれかしと。

Author: 柾千樫